「扶養内で働きたい」というパート・アルバイトを雇用している場合、月間労働時間の管理がシフト作成者の大きな課題になります。年収の壁を超えてしまうと、スタッフ本人の手取りが減るだけでなく、「もう出勤できません」と年末に人手不足が発生することも。

さらに2025年〜2026年は税制改正・社会保険改正が立て続けに行われており、従来の「103万円の壁」の概念が大きく変わったタイミングです。

この記事では、2026年4月時点の最新制度を踏まえ、シフト作成の現場で使える形で「年収の壁」を整理します。

この記事でわかること
- 2026年時点の「年収の壁」一覧と最新の変更点
- 月間労働時間の計算方法(時給別の目安時間)
- 年末の「働き控え」を防ぐシフト調整のコツ
- 複数スタッフの扶養上限を管理する実務


【一覧表】2026年の年収の壁

主要な「年収の壁」を整理すると、次のとおりです。

年収ライン 内容 2026年の状況
110万円 住民税の給与所得控除引き上げ後の課税基準(自治体により異なる) 2026年度住民税から
123万円 配偶者控除・扶養控除の対象となる配偶者・扶養親族の年収上限 2025年分から
130万円 社会保険の被扶養者から外れる年収(一般) 2026年4月から判定方法変更
136万円 配偶者控除(満額38万円)が受けられる配偶者の年収上限 2026・2027年分の時限措置
150万円 19〜23歳の親族(配偶者除く)の社会保険被扶養者上限/特定親族特別控除の満額ライン 2025年10月〜
160万円 所得税がかからない上限(2025年分) 2025年分のみ
173万円 配偶者特別控除(満額38万円)が受けられる配偶者の年収上限 2026・2027年分の時限措置
178万円 所得税がかからない上限(2026年分〜) 2026年分から
188万円 特定親族特別控除が完全終了する子の年収上限 2025年分〜

※住民税の非課税ラインは自治体・扶養家族の有無により異なります。


2026年の主な変更点

1. 所得税の壁が「103万円」から段階的に「178万円」へ

令和7年度(2025年)税制改正により、2025年分から160万円まで所得税がかからなくなりました(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)。

さらに令和8年度(2026年)税制改正により、2026年分からは178万円まで引き上げられます。内訳は以下のとおりです。

  • 基礎控除:62万円(本則)+特例加算42万円=104万円
  • 給与所得控除:69万円(本則)+特例加算5万円=74万円
  • 合計:178万円

ただし、基礎控除の特例加算42万円と給与所得控除の特例加算5万円は2026・2027年分の時限措置であり、2028年以降は消費者物価指数に応じて再設定されます。なお、毎月の源泉徴収への反映は2027年1月以後の給与からとなり、2026年中の変化は年末調整で精算される点に注意が必要です。

2. 130万円の壁の判定方法が変わる(2026年4月〜)

2026年4月以降、社会保険の被扶養者認定における「年間収入130万円未満」の判定は、労働条件通知書等に記載された労働契約の内容(基本給・諸手当・賞与)から算出した年間収入見込みで行われます。

つまり、労働契約上の年間収入が130万円未満であれば、契約に規定のない残業代などで一時的に超えても、原則として被扶養者として認定されます(一時的な収入が社会通念上妥当な範囲に留まる場合)。

これは厚生労働省の通知(保保発1001第3号・年管管発1001第3号、令和7年10月1日付)に基づく運用変更です。

3. 106万円の壁は2026年10月を目途に撤廃予定

従業員51人以上の企業で週20時間以上働くパート・アルバイトに適用される「月額8.8万円(年収約106万円)以上」という賃金要件は、令和7年(2025年)の年金制度改正法により、最低賃金の状況を踏まえて2025年6月から3年以内に撤廃されることとされており、2026年10月を目途に撤廃予定です。

撤廃後は「週20時間以上勤務」という労働時間要件が実質的なメインの基準になります。

4. 配偶者控除の満額ラインが「136万円」に(2026年〜)

2026・2027年分は、配偶者控除(満額38万円)を受けられる配偶者の年収ラインが136万円まで引き上げられます。これは配偶者の所得要件が58万円→62万円に引き上げられ、給与所得控除74万円と合算した結果です。

また、配偶者特別控除(満額38万円)の上限も173万円まで引き上げられます(2026・2027年分の時限措置)。

5. 19〜23歳の親族の社会保険扶養が150万円未満に(2025年10月〜)

2025年10月1日以降、健康保険の被扶養者認定で19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の親族は、年間収入150万円未満が基準となりました。学生であることは要件ではなく、年齢のみで判定されます(年齢は認定日が属する年の12月31日時点で判定)。子だけでなく、孫や甥なども対象です。

税制面でも、新設された「特定親族特別控除」により、年収150万円までは満額(最大63万円)、150万円超〜188万円は段階的に減額する控除が適用されます。


シフト作成で押さえるべきは「月間労働時間」

年収の壁は「年収」で表されますが、シフト作成の実務では月間労働時間に落とし込む必要があります。

時給別の月間労働時間目安(年収130万円未満を維持する場合)

パート本人が「年収130万円を超えたくない」と希望する場合の、月間労働時間の目安は次のとおりです(交通費・賞与を除く)。

時給 年間労働時間(130万円以下) 月間労働時間目安
1,000円 1,300時間未満 約108時間
1,100円 約1,181時間未満 約98時間
1,200円 約1,083時間未満 約90時間
1,300円 1,000時間未満 約83時間
1,500円 約866時間未満 約72時間

計算式: 希望年収 ÷ 時給 ÷ 12ヶ月

時給が上がると月間労働時間の上限が短くなるため、最低賃金改定時には必ず月間シフト時間の見直しが必要です。

各壁を目指す場合の目安(時給1,100円の場合)

目標年収 月間労働時間目安 主な意味
123万円以下 約93時間まで 配偶者控除の対象を維持
130万円以下 約98時間まで 社会保険の被扶養者を維持
136万円以下 約103時間まで 配偶者控除(満額)を維持(2026・2027年)
150万円以下 約113時間まで 19〜23歳の親族の社会保険扶養を維持
178万円以下 約135時間まで 所得税が非課税(2026年分)

スタッフに希望を聞くとき、「年収いくらまで」ではなく「月何時間まで入れますか」と具体化しておくと、シフト作成が一気に楽になります。


年末の「働き控え」を防ぐ4つのコツ

12月になると「もう扶養の上限に達するので今月は入れません」というスタッフが続出し、シフトが回らなくなる現場は多いはずです。

コツ1: 年初にシミュレーションを共有する

1月の時点で「このペースだと11月で年収上限に到達する」と見通しが立っていれば、スタッフ自身が月ごとに調整できます。

コツ2: 繁忙期は前半に寄せる

春〜夏に多めにシフトに入ってもらい、年末に向けて減らす設計にすると、年末のシフト空白を避けられます。

コツ3: 130万円超の一時的超過ルールを案内する

「年収の壁・支援強化パッケージ」における事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は恒久化されており、年収130万円を一時的に超えても、事業主が一時的な収入増である旨を証明することで、連続2回(最大2年間)まで扶養に留まれる可能性があります。シフト増加が一時的(繁忙期対応など)であることを事業主が証明する書類を用意できれば、スタッフの不安は減ります。

加えて、2026年4月以降は労働契約ベースの判定に変わるため、契約上の年収が130万円未満であれば、契約に規定のない残業代で超過しても扶養から外れない運用になります。

コツ4: 2026年10月以降の社会保険加入を前向きに案内する

106万円の賃金要件撤廃により、社会保険加入対象者が増えます。加入は目先の手取り減につながりますが、厚生年金の加入による将来の年金額増加、傷病手当金や出産手当金の受給など長期的なメリットもあります。人事面談で丁寧に説明することで、労働時間を増やしてもらえる可能性があります。


複数スタッフの個別上限を管理する実務

扶養内スタッフが増えると、手作業での管理が現実的に難しくなります。よくある課題は:

  • スタッフごとに希望年収ラインが違う(123万円厳守 / 130万円未満 / 150万円まで等)
  • 時給改定のたびに月間上限時間を再計算する必要
  • 月の途中でシフト追加すると、いつ上限を超えるか見えない
  • 掛け持ちスタッフは他店の労働時間も把握が必要

Excelで個別管理していると、月末にチェックしてから「超過していた」と気づくケースが多く、リカバリが難しくなります。

シフぽちでの月間労働時間上限設定

シフぽちでは、メンバーごとに月間の最大労働時間を設定できます。自動生成時にこの上限が制約として組み込まれるため、扶養内パートが複数いる現場でも超過シフトが作られません。

  • スタッフ別に異なる月間上限を設定可能(例:Aさん108h、Bさん90h)
  • 時給改定時は上限時間を更新するだけ
  • ドラッグ&ドロップで手動調整する場合も、上限超過をチェック
  • 複数店舗で勤務するスタッフは組織間で重複シフト防止

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よくある質問(FAQ)

Q. 2026年は「103万円の壁」はまだ意識する必要がありますか?

税制上の意味では、所得税の非課税ラインは2026年分から178万円に引き上げられ、配偶者控除の上限も123万円(2026年分からは136万円)に引き上げられたため、103万円そのものに税制上の意味はほぼありません。ただし、企業が支給する配偶者手当(家族手当)の支給基準が103万円のままになっている会社も多いため、スタッフの配偶者の勤務先の就業規則確認が推奨されます。

Q. 交通費は年収に含まれますか?

制度によって扱いが異なります。社会保険(130万円の壁)の判定では通勤手当も含むのが原則です。一方、所得税の計算では一定額までの通勤手当は非課税のため含みません。スタッフから相談された場合は、どの壁を意識しているかを確認しましょう。

Q. 賞与(ボーナス)がある場合はどう計算しますか?

年収には賞与も含まれます。夏冬に賞与を支給している場合、賞与額を差し引いた額を12ヶ月で割って月間労働時間の上限を計算します。

Q. 掛け持ちスタッフの年収はどう管理すべきですか?

スタッフ本人が他店舗も含めた合計年収を把握する必要があります。シフト管理者としては、自店舗での年間労働時間・年収見込みを正確に伝えることで、本人の管理を助けられます。

Q. 一時的に年収が130万円を超えたら即座に扶養から外れますか?

恒久化された「事業主の証明による被扶養者認定」制度により、一時的な超過であれば事業主の証明書類を提出することで連続2回(最大2年間)は扶養に留まれます。さらに2026年4月以降は労働契約ベースの判定に変わるため、契約上の年収が130万円未満であれば、契約に規定のない残業代で実収入が超過しても、社会通念上妥当な範囲であれば扶養認定が維持されます。

Q. 19〜23歳の学生スタッフはどの壁を意識すべきですか?

19歳以上23歳未満(配偶者を除く)の場合、社会保険の被扶養者認定は150万円未満が基準です。税制面でも、年収150万円までは親が「特定親族特別控除」を満額(最大63万円)受けられ、150万円超〜188万円は段階的に控除額が減ります。学生であるかどうかは要件ではなく、年齢のみで判定されます。


※本記事は2026年4月時点の法令・通達に基づき作成しています。所得税178万円・配偶者控除136万円への引き上げに含まれる特例加算部分は2026年・2027年の時限措置であり、2028年以降は消費者物価指数に応じて再設定されます。106万円の壁撤廃の正確な施行日は政令で定められます。最新情報は国税庁・厚生労働省・日本年金機構の公式情報をご確認ください。